この記事は、動物病院の譲り受けを検討している獣医師に向けて記載しています。動物病院の事業譲受(M&A)は、新規開業よりも低リスクで始めやすい選択肢です。すでに設備が整い、既存の飼い主様との関係がある状態からスタートできるため、勤務医の先生にとって現実的な独立の方法になり得ます。一方で、承継を成功させるうえで見落とせないのが、どの仲介業者に相談するかです。仲介業者の選び方を誤ると、価格交渉や情報開示の面で不利になり、承継後の経営に大きな負担を残すこともあります。この記事では、動物病院のM&Aを初めて検討する勤務医の先生に向けて、仲介業者の仕組みと注意点、失敗しない選び方をわかりやすく解説します。動物病院のM&Aで仲介業者が重要な理由M&Aを仲介業者を使わずに、当事者同士で行うのはかなり難しいです。相手を探すことが困難適正な事業価値(譲渡額)を把握できない交渉が、論理より感情に寄りやすい手続きの漏れが生じる契約書が作成しにくいそのため、M&Aにおいて仲介業者は非常に重要な存在になります。重要だからこそ、その仲介業者がM&Aと動物病院における両方の知識と専門性、さらには高い倫理観を持つのかが鍵です。しかし、仲介業者にはビジネスモデル上の特性があり、買い手である勤務医にとって注意すべき点もあります。まずはその構造を理解しておくことが大切です。M&A仲介業者のビジネスモデルと構造的な注意点仲介手数料は譲渡価格に連動する一般的なM&A仲介業者の報酬は、譲渡価格に応じて算出されます(レーマン方式)。取引金額が高いほど手数料も大きくなります。そのため、構造上、仲介業者には「できるだけ高い価格で成約したい」という動機が働きやすくなります。売り手と仲介業者の利害が一致しやすい病院を譲渡する売り手は、できるだけ高い評価で承継したいと考えるのが自然です。一方で、仲介業者も譲渡価格が高いほど報酬が増えるため、結果として売り手寄りの提案になりやすい場面があります。売り手からの手数料の方を高く設定している場合がある買い手からすると手数料を低くしてくれるのは助かるのですが、フェアトレードという観点では注意が必要です。長い協議プロセスの中で、仲介業者は「より多くの報酬」を得られる側、つまり売り手側に偏る可能性もあります。「この立地ならこの価格でもすぐに回収できますよ」などプロの営業トークを鵜呑みにしてしまうと、過剰な借金を背負い、思い描いていた動物病院経営ができなくなるリスクがあるのです。【国も注意喚起】実際に起きているM&A仲介トラブル近年は、M&Aが一般化するのに伴い、仲介業者によるトラブルの通報が増えており、中小企業庁もM&A仲介に関するトラブルへの注意喚起を行っています。実際に問題となりやすいのは次のようなケースです。【都合の悪い事実の隠蔽】設備の老朽化や人材面のリスクなど、マイナス情報の説明が不十分なまま進む【譲渡後の資金ショート】無理のある価格設定で承継し、譲受後の資金繰りが苦しくなる【不誠実な介入】当事者に十分な理解がないまま、成約だけを優先して話が進む【過度な営業行為】望んでいないのに案件を紹介したり、強引に引き合わせようとする勤務医が失敗しない仲介業者の選び方仲介業者のサポート如何で、その後の動物病院運営を分けることすらあります。事業承継後のトラブル防止や経営をうまく続けていくための「仲介業者の選び方」をご紹介します。1. 高く売ることだけを目的にしていないか買い手と売り手の双方が納得できる適正価格を前提に話してくれるかは、非常に重要です。M&Aはフェアバリューが原則であり、価格の根拠が曖昧なまま高値を勧めてくる場合は注意が必要です。2. 手数料は双方フェアに設定されているか手数料が売り手と買い手で変わるのかについても確認しておく方がベターです。獣医師個人が承継する場合のほとんど全てが「初めてのM&A」ですから、交渉がフェアに行われることは非常に重要です。M&Aはフェアトレードであるべきです。3. 獣医療現場への理解があるか一般企業のM&Aの実績があるというだけで選ぶのは早計です。動物病院には、動物病院だけの特有の指標があります。売上と獣医師数のバランス、新患の数、診療単価、原価率・人件費率が他の病院と比べてどうか、それは経営上どう解釈でき、どう対策できるのか。これらを説明してもらえないことには、承継するべきかどうか判断はできません。検討中のプロセスにおいても特有の問題は多く発生します(むしろそちらの方が多いかもしれません)。動物病院特有の法令対応を適切にガイドしてくれるか、運転資金はどのくらい準備すべきか、医療機器の評価ができるか。他にもいくらでも。こうした現場の実情を理解している相手でなければ、地域条件だけでおすすめされたり、単純な契約ごとの進行だけにとどまった限定的なサポートしか受けられません。4. ネガティブ情報も開示してくれるか良い話だけでなく、法令対応の不備、修繕が必要な箇所、人員体制の課題、地域特性、なども含めて、ネガティブなことも共有してくれるかを確認しましょう。承継後に問題が見つかるほど、買い手の負担は大きくなります。5. 執拗な営業姿勢M&Aは買い手・売り手となる当事者のペースが一番大事です。何度も営業をかけてきたり、執拗に接待会食に誘ってきたり、「早くしないと他の人に取られてしまいますよ」と急かしてくる場合は注意が必要です。そもそも動物病院は、営業トークで売り買いするような簡単なものではありません。%3Cdiv%20style%3D%22display%3A%20flex%3B%20justify-content%3A%20center%3B%20margin%3A%2020px%200%3B%22%3E%0A%20%20%3Ciframe%20%0A%20%20%20%20src%3D%22https%3A%2F%2Fhatenablog-parts.com%2Fembed%3Furl%3Dhttps%3A%2F%2Fxma.vet%2Farticle%2FLtHGTTVa%22%20%0A%20%20%20%20style%3D%22border%3A%200%3B%20width%3A%20100%25%3B%20height%3A%20190px%3B%20max-width%3A%20600px%3B%20display%3A%20block%3B%22%20%0A%20%20%20%20allowtransparency%3D%22true%22%3E%0A%20%20%3C%2Fiframe%3E%0A%3C%2Fdiv%3EM&A仲介契約を結ぶときの「超」要注意事項ここからは、特に注意して確認してほしいことを記載します。最低保証料は絶対にかかるお金。約500〜2,500万円で設定されていることが多い前述の通り、手数料はレーマン方式という数式に基づいて計算されることがほとんですが、ほぼ全ての企業で「最低保証料」が付されています(我々XM&Aは、ほぼ唯一ありません)。最低保証料は500〜2,500万円ほどが設定されている場合が多く、最低でもこの金額は払わなければならないという手数料です。例えば譲渡金額:5,000万円手数料率:5%最低保証料:500万円という状況だとすると、本来手数料は250万円(5,000万円の5%)で済むはずが、最低保証料に達していないので、結果500万円を支払う必要があります。譲渡額が10億円もするような大型案件であれば別ですが、個人にとっては大きすぎる誤差です。最低保証料は、契約時に説明を受けられなかったり、契約書をよく読まないと気付けないこともあるので必ず確認してください。選任条項があると、他の仲介からの紹介を受けられなくなるM&A仲介契約書で「選任条項」の文字を探してください。これを強く縛っている場合は、契約した仲介企業とだけしかM&Aに関わる相談ができなくなってしまい、他社からの紹介を受けたくても受けられないという拘束力が発生します。選択肢は多いに越したことはないですが、これで縛られてしまうと身動きが取れなくなるので注意してください。(XM&Aは他とやり取りできなくような選任条項はありません)事業承継はゴールではなくスタート。XM&Aは、中立の立場で「スタート」をサポートします私たちXM&Aは、元々仲介ではなく「買い手」の側にいました。今までに50病院ほどをM&Aで受け入れてきました。当然、数多くの仲介業者と接してきましたが、フェアで顧客本位な進行をしてくれる仲介者はそう多くありませんでした。なぜなら、仲介者にとっては事業承継がゴールだからです。でも当事者にとってはそこからがスタートです。だからこそ、XM&A(てんま)では、買い手・売り手双方の立場を尊重した中立的で顧客本位のM&A仲介を行い、ゴールへのサポートではなく、スタートへのサポートをしています。例えば、実際に行っていることは以下です。事業価値の算定根拠はすべて開示事業計画を作成し、将来的な経営計画も一緒に作成手数料率は双方同じ。中立的な立場からプロセスをサポート営業は一切行わず、院長への接待もなし3者(売り手・買い手・XM&A)の会食時は、3者割り勘ネガティブ情報も開示し、対策も一緒に検討強引な進行はせず、判断は常に当事者に委ねるXM&Aでは、動物病院の承継に特化した立場から、勤務医の先生が不安に感じやすい資金面・経営面・引き継ぎ面まで含めて相談可能です。最低保証料はないですし、他社からの紹介を受けられなくするような選任条項もありません。まずは、事業承継という選択肢を具体的に知るところから始めてみてください。この記事を書いたライター小川篤志(獣医師)東京都出身 日本獣医生命科学大学 獣医学部卒業後、宮崎犬猫総合病院 院長、TRVA夜間救急動物医療センター副院長として臨床経験を積む。ビジネスサイドに転向後、東証一部上場企業の経営企画部長に就任。新規事業、経営管理、PR / IR、ブランディング、マーケティングを統括。日本初のペット産業特化型ベンチャーキャピタルCEO、海外動物病院法人CEO等を歴任。FASAVA(アジア小動物獣医師会学会)日本支部 理事、ITスタートアップの経営企画担当を経て、XM&Aを創業。主な功績、受賞歴COVID-19感染者のペットを預かる「#stayanicomプロジェクト」の企画・統括・責任者(環境大臣 表彰)熊本大震災 ペット災害支援(熊本県知事 表彰)、西日本大豪雨ペット災害支援日本初のチャットボットを活用した保険オペレーションシステムの構築Web Media「猫との暮らし大百科(web media)」を創設。編集長に就任し、月間100万PV超のメディアに成長上場企業 / スタートアップ合わせ総額50億円超の資金調達を主導<その他現任> 公益社団法人 東京都獣医師会 理事、学校法人 ヤマザキ学園 講師facebook、Podcast