どうも。XM&A(てんま)の小川篤志です。最近、マーケティングに課題感を持っているという声をよく耳にします。一般的なマーケティング論が記述された本は数多ありますが、じゃあそれを自分の病院にどう落とし込んでいくか、具体的な施策にまで昇華させられるかというと、結構難しかったりもしますよね。そもそも、マーケティングなどすべきではない、という考えもあります。これも一理あります。病院という特性上、顧客誘引性を謳うことは倫理的に受け入れ難い先生もいらっしゃるでしょう。しかし、マーケティングをしていない病院はありません。看板を出すことも、HPをつくることもマーケティングの一部です。飼い主さまとのコミュニケーションや顧客満足度の向上だって、広義のマーケティングといえます。ただしあまりに言葉の定義が広すぎるので、ここではわかりやすく「飼い主さまが集まること=マーケティング」と定義しましょう。待合室が溢れかえるほどの病院もあれば、その逆もあります。なぜ、そこに差が出るのでしょう。病院によって色々な理由はありますが、一つだけ共通項として言えることは、すべからくマーケティングに対して努力をしているように思います。じゃあどんな努力が必要なのか?といった点をご紹介していきます。といっても、テクニック論にはなるべく触れません。そんなことに努力の時間をかけたくない!という方は最後の章までジャンプしちゃってください。なぜマーケティングが必要なのか?必要ありき、で書くのも難ですが、正直に言って、これからかなり重要になってくると思っています。なぜなら飼育頭数が減少しているからです。さらに、動物病院の数は増えているからです。その結果、ここ10年で、1院あたりの犬猫数は約2割も減少しています。そしてそれはさらに加速していきます。開院し、真摯に臨床をやっていればおのずと飼い主さまが集まる、という時代では無くなってきました。今は良くても10年後はどうか、という視点を持てるか。つまり「選ばれ続ける病院であるために」正しく危機感を持っておく必要がありそうです。外的な活動と内的な活動さて、直感的にわかりやすいのでよく引き合いに出されるのが、「ファネル」という概念です。昔からあるマーケティング用語です。ここからは私的な解釈ですが、外的・内的と大きく2つの活動に分けられますと思っています。顧客視点で順を追って見てみてください。動物病院の外的なマーケティング活動動物病院があることを認知する興味・関心を抱く周囲の病院と比べて検討する病院に行くここまでが外的な活動です。つまり、顧客になるまでのプロセスを指します。動物病院の内的なマーケティング活動再診の指示に従って通院する良かったので、健康診断などでまた通う(通い続ける)「あの病院いいよ!」と知人に勧めるSNSや口コミで発信するここは内的な活動です。つまり、顧客になっていただいたあと、「また通いたい!」や「知人に勧めたい」とまで思わせられるかどうかのプロセスです。ファン化とかCRMとかとも言われますが覚えなくてもOKです。全ては「知る」ことからはじまるここまでで、どちらが重要だと感じましたか? そう、どっちも重要です。では、もう一つ質問です。どちらに重きを置いていますか? 多くは、右側の内的活動ではないでしょうか。これは正しいことなのですが、ある意味でカイゼンの余地があるともいえます。というのも、何かを購買しようとしたり、何かのサービスを受けようと思った時、その何かを知らなければ(非認知の状態)、絶対に購買はされません。当たり前ですが。LUXスーパーリッチばかり買っている例えば、私は若い頃からシャンプーは「LUX スーパーリッチ」を使っています。無くなれば、もはや何も考えずまた買っています。ほとんど他の棚の商品は見えていません。たしかにもっと頭皮に良いものや、サラサラになるものや、いい香りがするものもあるかもしれませんが、ほぼ漫然とこれを買い続けています。じゃあファンかと言われると別にファンではないので、他人に「これいいよ!」と勧めたことは正直ありません。。(すみません)ですがここで言いたきことは、なぜ使い始めたか、というところです。それはCMです。米国アクセントでいい感じに「LUX Super Rich!」と繰り返されるCMを見たことがある方も多いのでは。CMとは広告です。広告の役割は多くの場合「外的な活動」に焦点があてられます。特に、「認知」の部分ですね。私の場合は、CMで認知したからこのシャンプーを使い始めたし、一定程度の満足感があったのでその後も使い続けているということです。ではどうやって知ってもらうか?最近では、かなり多くの病院がgoogleのリスティング広告を出すようになりました(「〇〇市 動物病院」と検索した時に、上部に「スポンサー」として表示されるアレです)。表示させる地域や予算を決められますし、簡易的に広告を打つことができるのでやりやすいですよね。街頭広告も古からある手段ですが、意外にアリだと思います。特に、駅広告なんかは単価も安いですし、特定地域の人だけに見せられるので悪くない手段だと思います。これに限らず手段はいくらでもありますが、ここでは割愛します。ただ、広告が認知につながる唯一の手段ではありません。既存顧客(ファネルの右側の部分)から紹介してもらうこともまた認知以降のファネルに強烈に影響します。直接の口コミほど強いものはないのです。うちの病院のいいところってなんだろう?じゃあ認知したらすぐに来院するのか? 当然そうもいきません。その後のプロセスを適切にプロットできているかが重要です。そのためには、自身の病院にどういった強みがあるのかを徹底的に考え抜くことが重要です。それが、顧客が選ぶモノサシになります。仮説で構いません。一人で考えきれなければ、スタッフ全員でミーティングをしてみるのも良いです。例えば、私がある病院で実施したセミナーでは、たった30分たらずで、ものすごい量の「うちのいいところ!」が出てきました。もはや付箋が貼りきれませんでした。中には、院長自身が気づかなかったものもたくさんあったようです。病気と対峙することが多い獣医師よりも、むしろ飼い主さまとの距離が近い看護師さんや受付の方の方が、自病院の良さを客観的に認知しているかもしれません。だて動物病院ブログより(https://date-vet.jp/vet-blog/20240115-2/)その上で、それをどう伝えたら興味や関心を抱いてもらえ、来院につながるのか、を論理的に仮説立てしてみましょう。それで、まずはやってみる。その後、振り返りをしてみて、効果がいまいちだと思ったときには、「ボトルネック」がどこにあるのかも探ると良いです。ボトルネックとは、ワインボトルのように急に細くなるところを言います。つまり、「ここまではうまく行った。けれど、ここから急に狭まった」というところを検証します。さっきのLUXスーパーリッチの例でいえば、私の場合のボトルネックはファネル右側の「紹介」に当たります。最初からうまくいくことはないので、失敗を恐れずチャレンジしてみてください。たくさんお金をかける必要はありません。小さく始めて、うまくいったら大きく出る、というやり方で大丈夫です。長くなってきたので、ここまでとして、後編では、顧客あたり獲得コスト(経済合理性)の考え方についてもご紹介します。マーケティングなんてしてられない!という先生のためにぶっちゃけ、そんな時間もないし暇もない、という先生には、もっと合理的に飼い主さまに来ていただける方法があります。それが「カルテ承継™︎」です。カルテ承継とは、閉院予定の動物病院のカルテを引き継ぐ(買収する)ことで、その病院の飼い主さまに転院していただくXM&A独自のM&A手法です。地域の獣医療インフラを維持していくという想いの継承と、マーケティングをせずとも合理的に顧客数増を見込める手段です。カルテ承継についてはこちらでも詳しくご紹介しています。動物病院の新しい事業承継のかたち「カルテ承継」とは何か?もし、近隣の動物病院が閉院するということを見聞きしたり、カルテ承継にご興味を持たれましたら、ぜひご一報ください。この記事を書いたライター小川篤志(獣医師)東京都出身 日本獣医生命科学大学 獣医学部卒業後、宮崎犬猫総合病院 院長、TRVA夜間救急動物医療センター副院長として臨床経験を積む。ビジネスサイドに転向後、東証一部上場企業の経営企画部長に就任。新規事業、経営管理、PR / IR、ブランディング、マーケティングを統括。日本初のペット産業特化型ベンチャーキャピタルCEO、海外動物病院法人CEO等を歴任。FASAVA(アジア小動物獣医師会学会)日本支部 理事、ITスタートアップの経営企画担当を経て、XM&Aを創業。主な功績、受賞歴COVID-19感染者のペットを預かる「#stayanicomプロジェクト」の企画・統括・責任者(環境大臣 表彰)熊本大震災 ペット災害支援(熊本県知事 表彰)、西日本大豪雨ペット災害支援日本初のチャットボットを活用した保険オペレーションシステムの構築Web Media「猫との暮らし大百科(web media)」を創設。編集長に就任し、月間100万PV超のメディアに成長上場企業 / スタートアップ合わせ総額50億円超の資金調達を主導<その他現任> 公益社団法人 東京都獣医師会 理事、学校法人 ヤマザキ学園 講師facebook、Podcast